秋の月は日々戯れに
「あなたの願いは、出会った時からずっと変わりませんからね。だから、言われなくても分かります」
そう言って、彼女はようやく視線を下ろした。
「あなたはわたしに、消えて欲しかったのでしょう」
泣き笑いのような、どちらとも判別し難い歪な笑顔。
そんな顔で彼女は、畳み掛けるように続ける。
「ちょうど良かったですよ。わたし、せっかく幽霊になったのだからこの瞬間を目一杯楽しんで、時が来たらちゃんと成仏して、生まれ変わってまた生きようって、そう決めていたんです。だから、」
「俺がいつ、そんなことを言った?」
続けるはずだった言葉が、ねじ込むように発せられた彼の声に遮られる。
その声音は、どこか怒っているようだった。
「俺がいつ、あなたに消えて欲しいなんて言った?もちろん、最初の頃に言ったのはノーカンで。それ以外で、もっと言うなら俺が勝負に勝ったあとで、いつそんなことを言った」
彼女に対して他人行儀な敬語を崩さなかった彼が、静かな怒りに燃えて口調を荒らげる。