秋の月は日々戯れに
彼女はちょっぴり、困惑していた。
「勝手に勘違いして何も言わずに出て行って、そのせいで俺は食欲不振に陥って、挙句眠れなくなってるってのに……。俺の願いは変わらないから言われなくても分かるって?本当に消えて欲しいって願ってたら、こんなことにはなってないし、あなたを毎夜夢に見たりもするか!!」
勝手すぎる彼女に、心底腹が立った。
でも、これ以上夜の公園で怒りに任せて叫んでいたら、警察を呼ばれること請け合いなので、なけなしの理性を総動員して何とか自分の心を鎮めにかかる。
丁度いい具合に冷え切った空気が、彼の火照った顔や、火が付いたように熱い頭を冷やしてくれた。
「えっと……わたしはなぜ、怒られているのでしょう」
おずおずと問いかける困惑顔の彼女を、彼はひとまず睨みつける。
なぜ、ここまで言って分からないのか。
「そ、そんな鬼のような顔で睨まれても、分からないものは分かりません!だって、あなたはずっと」
――ずっと、早く成仏して自分の前から消えて欲しいと思っていた。