秋の月は日々戯れに
間違いではない、でも正しくもない。
「気持ちって、変わるもんでしょ」
「変わらない気持ちだってあります」
どうにも頑なな彼女は、彼の気持ちを受け止めようとはしない。
「あれだけ、自分は妻だ!って騒いでおきながら、今更受け入れないってどういうことだよ」
「あれは……そういう設定の方が、楽しいと思ったんです。そしたら、自分でもビックリするくらいその設定にノってしまいました。生きていた頃は女優だったかもしれません」
「……この状況でボケるか、普通」
こんなにも怒り心頭な彼に向かって、平気でボケをかましてくる。
おかげで、彼の中で張り詰めていたものが、緩んでいく気配がした。
それはもうゆるゆると、これからもう一度張り詰めるのは困難な程に。
「とりあえず下りてこ……来て、どうぞ」
流石に“来い”は言いすぎかと咄嗟に言い直したら、なんだか変な感じになってしまった。
でももう一度言い直すのもおかしい気がして、彼はそのまま彼女の反応を待つ。