秋の月は日々戯れに
滑り台の上の彼女はといえば、何やら難しい顔をしていた。
「このくらいの距離感が、今のわたし達には適切かと思いますが。と言うより、できればわたしの気持ちを察してください」
「俺の気持ちは察しないのに、自分の気持ちは察しろって?」
言われてみればなんだか横暴な気もしてくるが、彼女にしてみれば、それはそれ、これはこれだ。
しばらく無言で睨み合い、もとい見つめ合っていた二人だが、彼の方が先にしびれを切らす。
「早く」
短くて、だからこそ威力のあるその言葉に、彼女は渋るのを諦めて、仕方なく滑り台の手すりに手をかけた。
このままだと、いつまた彼の怒りが再発してもおかしくない。
自制が効かなくなって夜の公園で一人声を荒らげる彼が、ご近所さんに呼ばれた警察によって連行されるのは、彼女としても本意ではなかった。
「ちょっ!?」
驚きに目を見開く彼の前で、彼女は華麗に滑り台の上から身を躍らせる。
「なんで滑らないんだよ!」
まさかそう来ると思わなかった彼は、彼女が幽霊であることも忘れて、慌てふためいて落下点に入った。