秋の月は日々戯れに
「どこに行くのかちゃんと言ってください!離すか離さないかは、それから決めます」
やっぱり期待通りにはいかなかった。
それでも最終的には離してもらわないと目的が達せられないから、仕方なくため息混じりに口を開く。
「今日は卵が安いんです。あなたが大量に消費してくれたせいで、もうほとんど在庫がないので、これから買いに行くんですよ」
言いながら、そういえばトイレットペーパーも切れかかっていたなと思い出す。
「なるほど、お買い物ですか」
納得したらしい彼女が、するりと腰に巻きついていた腕を離し、にっこり笑って隣に並ぶ。
「では、わたしも一緒に行きます。そろそろ、卵以外のおかずも欲しいと思っていたところでした。お弁当といえば、やっぱりウィンナーやプチトマトなんかも定番ですからね。彩的にも、是非欲しいところです」
何やら、あれも欲しいこれもあったらいいなどと指折り始めた彼女を、何を言っているんだこいつはという思いでもってしばらく見つめる。
けれど一向に彼女がその視線に気づかないので、仕方なく彼は口を開いた。