秋の月は日々戯れに
「一緒になんて行くわけないでしょ、何言ってるんですか。なんで幽霊連れて買い物に行かなくちゃいけないんです」
キョトンとした顔で彼を見上げた彼女は「あなたの方が何を言っているんですか?」と首を傾げる。
「あなたにお任せしたら、どうせ卵しか買ってこないに決まっています。あの冷蔵庫を見れば分かりますから。いくら卵がお好きでも、わたしが嫁いできたからには、それしか食べない生活なんて断じて許しません!」
「だから一緒に行くんです」と締めくくった彼女を、ため息混じりにジト目で見やる。
「別に、卵が好きだから卵しか冷蔵庫になかったわけじゃありません。それにあなたは、嫁いできたんじゃなくてとり憑いてきたんでしょ」
「そんなこと言って、わたしの知らないうちに卵を大量購入しようとしたって無駄ですからね」
この幽霊は、相変わらず言っている事がとんちんかんで、しかも人の話を聞いていない。
「しませんよ!」
無駄な抵抗と分かっていながらも声を荒らげてドアを開け放つと、外に出て素早くドアを閉める。
ため息をつきながら隣を見ると
「ため息が多いですね。それでは、幸せがどんどん逃げて行ってしまいますよ」