秋の月は日々戯れに

沸々と湧いてきた怒りを何とか声に出さずに飲み下すと、彼女を追い越してレジに向かう。


「あっ、ちょっと待ってください!まだお買い物は終わっていません」


がしっと掴まれた腕から全身にぞわっと寒気が走って、一気に鳥肌が立った。


「せっかく来たんですから、冷凍食品も見ていきましょう。あんなに便利で美味しい文明の利器を、活用しない手はないですからね。もちろん、基本は手作りですよ。でも、あと一品なにかって時にとても使えます」


そう言って腕を離した彼女がルンルンと足取りも軽く進んでいく様子を、しばらく立ち止まって眺める。

今ならば、こっそり会計をしてひっそりと家に帰ることができるのではないかと思ったが、万が一気がついた彼女に玄関でくらったようなタックルをかまされて、店の中で派手にずっこけるところを想像したら、ため息と一緒に自然と足が前に出た。

そんな恥ずかしめを受けるくらいなら、素直について行ったほうがまだマシだ。


「あれは、お料理が苦手な方にはとってもいいアイテムですよね。レンジでチンするだけなので、誰でも美味しく作れます。まあ、わたしは料理が苦手な方ではないですけどね」
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