秋の月は日々戯れに

などとうそぶく彼女の後ろを、どの口が言ってんだと心の中で突っ込みながら歩いていく。

ふと、前方からカートを引いた親子が歩いてくるのが見えた。

彼女と正面からぶつかりそうになって慌てて避けたのは子供の方で、その母親は突然おかしな動きをした我が子を不思議そうに見つめている。


「あっ、ありました!冷凍食品売り場です」


そう言って走り出した彼女のすぐ目の前を、制服姿の女の子二人組が、カゴいっぱいのお菓子を持ってかしましくお喋りしながら通り過ぎて行く。

危うくぶつかりそうになって足を止めた彼女が「すみません!わたし、ちゃんと確認もせずに」とペコペコ頭を下げるが、二人の視線はチラリとも彼女を捉えない。

それでもきっちり謝罪した彼女は、今度はちゃんと周りを確認してから、通路を渡って冷凍食品売り場へと向かう。


「これは!とてもラッキーです。今日は、冷凍食品がお安いですよ」


振り返った彼女が目を輝かせて彼を手招くと、丁度冷凍食品売り場を通り過ぎようとしていた若い店員が、突然立ち止まってキョロキョロと辺りを見回し、不思議そうに首を傾げた。

完全に見えない人がいれば、見えている人もいて、かと思えば声だけが聞こえている人もいる。

傍から見ていると、それはなんだかとっても不思議な光景だった。





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