秋の月は日々戯れに


「いいんですよ、そんなに焦って視線を逸らさなくても。旦那様になら、いつだって見られる準備は出来ています!」

「いらん準備しないでください!」


ドーンと来いと言わんばかりの顔を睨みつけてから、彼はため息と共に彼女に釣られて止めていた足を踏み出す。

間違っても見えてしまわないように、視線は足元に向けたまま追い越そうとしたら、彼女は楽しそうに笑いながら前に向き直って歩き出した。

結局、少し前を行く彼女の後ろを、まるで追いかけるようにして彼が歩いていく構図は変わらない。


「今度のお弁当は期待していいですよ。あと、今日の夕飯も。まあ、お味噌汁はインスタントですけど」


冷凍食品は文明の利器だと絶賛するのに、インスタントとなると途端に評価が下がるのは謎だが、理由を語られると聞くのが面倒なので黙って歩く。

予定外の買い物ばかりでずっしりと重たいスーパーの袋、その持ち手が手の平に食い込んで地味に痛い。

卵だけ買いに出たつもりが、とんだ出費になってしまったと内心で嘆きながら歩いていると、ふと何かが頭の隅を掠めていった。

何か、何かとても大事なことを忘れているような気がする。

卵、卵、卵……卵と、あともう一つ――
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