秋の月は日々戯れに


「それが余計だって言ってるんです!卵とトイレットペーパーだけ買う予定が、予定外のものが多すぎて買いたいものを忘れるなんて、余計以外の何ものでもないでしょ」

「なぜトイレットペーパーくらいでそんなに怒るんですか。わたしはあなたの妻として、全てあなたのことを考えて選んだんです!何一つ余計なものなど買っていないと断固主張します」

「あなたは妻じゃありません!!」

「…………なに、してんの?」


ここがまだ外であるということをすっかり忘れて声を荒らげていた二人、というより主に彼は、突然後ろからかけられた声にハッとして振り返る。

そこには、怪訝そうな顔をした同僚が立っていた。


「あっ、お、えっと…………こんにちは」

「……うん。こんにちは」


動揺しすぎて咄嗟に挨拶をしたら、ますます変な感じになって二人の間に沈黙が生まれる。


「トイレットペーパーがどうのこうのって、遠くまで聞こえてたよ。あんな大声出せるんだね、ビックリした」

「いや……ちょっとほら、なんて言うか…………」


あまり声を荒らげたこともなければ、大口を開けて笑うこともない彼。
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