秋の月は日々戯れに

足が透けているせいで、しっかりと床を踏んで歩いていても、ふわふわと宙を漂っているように見える。


「もっとちゃんと見てください!妻にはいつだって、可愛くいて欲しいとは思わないんですか」

「あなたは妻じゃないでしょ」


ひらひらと激しく裾を揺らすおかげで、危うくスカートの中が見えそうだ。

足が透けているとはいっても、中がどこまで透けているかは定かでないし確かめたくもないから、見える前に視線を逸らす。


「どこ見ているんですか!ちゃんとご自分の妻の姿を目に焼き付けてください」

「だから……」


視線を逸らしたままで呆れたように呟くと、彼女がグッと距離を詰めて青白い手を伸ばし、両手で彼の頬を挟んで無理やり自分の方を向かせた。


「こっち見てください!」


挟まれた頬がビックリするほど冷たくて、ぞわっと全身に鳥肌が立つ。

じっくり近くで見たのはこれが初めてだが、彼女には心霊番組でよく見るような幽霊独特のおどろおどろしさが全くなくて、やっぱり見た目は普通。
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