秋の月は日々戯れに
一人は誰が見ても血色のいい肌色をしているが、もう一人は明らかに肌の色に温度がない。
その青白い顔をぼんやりと見つめていたら、視線に気がついた同僚が、彼と彼女を交互に見やってまたわざとらしくため息をついた。
「全くあんたらは二人して……。自分の妻に見とれるのとか、それあたしがいない時にやってよ。ほんと、困ったもんだ。このバカップ……いや、バカ夫婦は」
「誰がバカだ」
やれやれと肩をすくめる同僚に視線を移して睨みつけると、その隣にいた彼女が照れたように笑いながらチラチラと彼の方を見やる。
「いいねー、あっきー。愛されてるねー」
えへへと嬉しそうに笑う彼女がまたチラチラと反応を伺うが、ここで反応したら負けであることは充分分かりきっているので、彼は無反応のままに視線を逸らしてコーヒーを啜る。
「ねえねえ、あっきー。結婚ってさ、どんな感じ?」
興味津々な同僚の問いかけに、チラチラと彼の方を伺っていた彼女の視線がピタッと止まる。
それから同僚の方に向き直った彼女は、珍しくほんの少し困ったように眉根を寄せた。