天神学園のお忍びな面々
「大変なんかじゃねぇよ」

頭の後ろに両手を回し、紀州は不満げに漏らす。

「甲斐…じゃなかった、リュークか。あいつは美緒の護衛に行ったりしてるのに、何で俺はこんな地味で何の危険もねぇ密偵任務なんだよ。俺だって将軍の修行地だった天神ってとこ行ってみてぇよ」

「……」

紀州の隣で、テリアは俯いている。

「テリアだって、天神行ってみてぇよなあ?」

「…紀州君の行く先が、私の行き先だから…」

控え目に言うテリアの視線は、僅かに紀州の方向とは食い違う。

彼女の目は、見えていない。

生まれつき見えないのだ。

「いつも優等生の回答だなあ、テリアは。たまには我儘言った方がいいぞ」

「オメェは言い過ぎなんだよ紀州」

リュートが額に青筋立てる。

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