天神学園のお忍びな面々
「こっちだ紀州!」

リカに向けられる牙を、甲高い声が止める。

振り向く紀州。

そこにいたのは、マモルだった。

手にしているのは竹刀。

とても犬神のオーラを突き破れるものではない。

それでも。

「おっと!」

瞬時にして標的変更、爪を振り下ろしてきた紀州の攻撃を、マモルは回避する。

ここまでレオ、夕城三人衆、リュークを悉く叩きのめしてきた紀州の攻撃を、マモルは回避し続けている。

何という韋駄天ぶりか。

スピードだけなら夕城三人衆を上回るというのも頷ける。

彼が時間を稼いでいる間。

「おう…準備はいいかよ」

既にボロボロになった蘭丸が、夜桜を支えに立ち上がった。

爛々と赤く輝く眼。

臥龍の血を引く者として、炎を帯びたような瞳が紀州を見据える。

その隣には。

「いつでもいいぜえ」

白道着姿の龍鬼が立っていた。

…道着が、足元から黒く染まり始めている。

3つの異なる血の同時使用。

龍鬼の考えていた更なる限界突破を、今ここで解放する。

もしこの血のコントロールを失敗し、紀州共々龍鬼まで暴走するような事になれば、永久封印だ。

嘗て臥龍が丹下 龍太郎の体内に封じられ、鴉丸 禿鷲が橘 龍一郎に施されているのと同じもの。

封印としては最大クラスのものだ。

原則、封印は内部からは破れない。

効力は数百年単位は持続する。

幾つもの都市が壊滅する危険性があるほどの危機がある対象に対してのみ、佐倉の眷属や小岩井一族が使用の許可を承認する。

無期懲役のようなものだ。

それでも。

「化け物を止めるにゃ化け物の力しかあるめぇよ」

龍鬼の全身が、犬神もかくやというほどの黒いオーラに染まる!

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