天神学園のお忍びな面々
その根元に、人がいた。

いや、人かどうかすら定かではない。

ともすれば周囲の景色に同化して、甲斐が見逃してしまってもおかしくないほどの、希薄な存在。

少年か少女なのかすら分からない。

ただ、大樹の根元に腰掛け、まるで大樹と一体化するように座している。

まだ早朝の、吐息すら凍える寒さの中で。

「…寒くないのか…?」

白い息を吐きながら、甲斐は声をかけてみる。

返事はない。

こちらに視線を向けているので、気付いていない訳ではないのだろうが。

「そんな所に居ては、風邪を引くぞ?」

もう一度、声をかけてみる。

やはり返事はない。

会話する意思はないのか。

無理に言葉を引き出す必要もなく。

甲斐は大樹を見上げる。

「立派な木だな。まるで御神木のようだ。雄々しく…そして神々しくさえある」

「…………………………寒くないです…」

随分と遅れて、反応が返ってきた。

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