天神学園のお忍びな面々
話がなかなか進まない。

「ほら、真太郎君の代で、琴月宗家の紅葉君が、少しご乱心だった時期があったでしょう?」

セレナは宗家の侍すら、君付けで呼ぶ。

彼女の言っているのは、真太郎の代…天神学園では最強と名高い『シオン一味』の代で、当時の琴月宗家・琴月 紅葉(ことづき もみじ)が夕城宗家に叛旗を翻した事件だ。

臥龍の子息・鴉丸 禿鷲(からすま とくしゅう)と結託して天神学園の『国崩し』にかかった。

これを天神学園のみならず、夕城、琴月両方の宗家も重く見た。

紅葉が叛旗を翻したのは、技量がありながら、何故自分が分家に甘んじていなければならぬのかという憤りから。

そこを、野心家である禿鷲に唆されたのだ。

甘言に惑わされたのは紅葉の未熟。

しかし、宗家達は考える。

そもそも宗家の定義とは何か。

分家とも懇意で、血の上下関係を問わないのであれば、宗家の息子が必ず跡を継ぐ、という縛りも最早古ぼけた掟なのではないか。

実際紅葉は真太郎や姉夫妻より心の面で弱かったものの、彼をそうさせたのは宗家や長男、長女が家を継ぐという掟が生まれた時より存在していたが故。

ならばここは一度古い掟を白紙に戻し、『真に強い侍』が宗家を継ぐ、という新しい形をとってみてはどうかと。

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