One Night Lover

その夜、海斗が仕事を終えて帰って来ると
華乃はボーッと何かを考えているようだった。

海斗はそれが昼間見た男のせいだとすぐにわかった。

「華乃ちゃん、ただいま。」

しかし海斗はそれを責めたりしない。

人に捨てられるのには慣れていた。

華乃と付き合う前、人妻の女に本気になって
呆気なく捨てられた時も仕方ないと思った。

華乃の心も最初はあの男のもので、
自分とは軽い浮気の延長で
華乃の気持ちが戻ってもそれは仕方のないことだ。

人の気持ちはどうにもならないことを海斗は知ってる。

執着すれば傷は深くなる。

そのことを恐れて海斗は心のどこかでいつでも別れる準備をしている。

華乃は海斗が帰って来ると

「おかえり。」

と笑顔で迎えてキスして来た。

「何？華乃ちゃん、今日はエッチモード？」

海斗はそれがあの男を思い出したいのか
忘れたいのかどちらかの反動だとわかっても
優しく華乃を抱きしめた。

そして華乃にキスをした。

愛しくて離したくなかった。

だからいつもより強く華乃の身体を愛してあげる。

「海斗くん、今日はどうしたの…？

なんか…すごくて…」

「すごくて…何？」

「やらしい。」

「やらしいのは華乃ちゃんだよ。」

そう言って華乃にまたキスをした。

深夜までそれを続けて、疲れ果てた華乃を抱きしめた。

「華乃ちゃん、もし戻りたいなら俺に悪いとか思わないで。

もともと華乃ちゃんは違う世界に居たんだから。」

その言葉で華乃は閉じていた瞳を開いて海斗を見た。

「何か聞いたの？」

「昼間、見たよ。

ものすごいカッコいい人が逢いに来てたよね。」

華乃はそれを海斗にだけは知られたくなかった。

海斗を傷つけたくなかった。