One Night Lover

今の華乃だって海斗と離れたくなかった。

「バカだね。海斗くん、心配しないでよ。

私はここに居る。

この世界が好きなの。

海斗くんの居るこの場所が私の居場所だと思う。」

そう言って華乃は海斗の頰にキスをすると
海斗はお返しに華乃の唇にキスをした。

「華乃ちゃん、好きだよ。

マジで…愛してる。」

「私も愛してるよ。」

別れる気なんかなかった。

海斗は居心地が良くて、それでいて刺激的で
藤ヶ瀬とは違う魅力があった。

前は圧倒的な王様のような藤ヶ瀬が好きだったけど…
今の華乃にはセクシーでいつもそばに居て愛してくれる海斗の方がずっと魅力的に思える。

何しろ海斗は放って置けない男だった。

自分がいなければどうなってしまうんだろうと心配でとてもじゃないが1人に出来なかった。

それにもう追いかけるばかりのあんなに苦しい恋はしたくなかった。

「海斗くん、どっか旅行でもしようか？」

「いいね！どこ行く？

温泉とかどう？

部屋に付いた露天風呂でさ、海とか見ながらエッチしたいんだよね。」

「えー？何それ！」

「良いだろ？露天風呂でエッチ。」

華乃は海斗の不安を取り除いてあげたかった。

しかし藤ヶ瀬は次の日も華乃に逢いに来た。

「晩飯いっしょに食わない？」

華乃は海斗の店に行こうとしていた。

「悪いけど…今日は行くとこあります。」

「どこ？送ってくよ。」

藤ヶ瀬が運転手付きの車に乗るように手招きするが

「大丈夫です。歩いてすぐだから。」

そう言うと藤ヶ瀬は華乃の後をついて来た。

「じゃあそこまで歩いて送る。」

華乃は藤ヶ瀬を海斗に会わせたくなかったが
藤ヶ瀬は店の中までついて来た。

華乃は仕方なく藤ヶ瀬に海斗を紹介した。

「華乃、誰？そのいい男？」

食いついたのはハルちゃんで海斗は藤ヶ瀬を見て
少しだけ顔が強張った。

「今、一緒に暮らしてる海斗くん。

海斗くん、この人昔の上司の…藤ヶ瀬さん。」

竜はまだ若く美しい海斗を見て、少し不安になった。

海斗は海斗で目の前の圧倒的な存在感の藤ヶ瀬という男にとてもじゃないが太刀打ちできないと思った。