One Night Lover
3ヶ月後、華乃は海斗と籍を入れた。

ハルちゃんの店で簡単な結婚式を挙げたが、
みんなに祝福されて幸せだった。

そして華乃のお腹には海斗の子供が宿っていた。

華乃が結婚した話は竜にも健にも届いた。

竜は華乃に振られてからは仕事一筋で
しばらく女は要らないと思ったが、
華乃の結婚のニュースを聞いて堪らなく寂しかった。

華乃と出会ったクラブに久しぶりに足を運んで
バーボンを飲んでいると
隣の席に少し酔った若い女の子が座った。

「おじさん、カッコいいな。

めっちゃ私のタイプ。」

その姿は20歳になったばかりの華乃と重なった。

「一緒に飲むか?」

竜がちょっと声をかけると女の子は簡単に隣に座った。

「お前も簡単なんだな。」

「簡単じゃないよ。

まだ誰とも寝てない。

試してみる?」

竜は試してみたかったが、自分はもうあの時のような若さはない。

「いや、遠慮しとく。」

そして彼女と一杯だけ飲んでクラブを出た。

「ガキはもうゴメンだ。」

そう言って一人で落ち着いたバーに入った。

「こんばんは。今日は遅いですね。」

「ちょっと懐かしい場所に行ってきた。

でももう俺には似合わない場所になってた。」

バーテンダーは何も言わず、いつものバーボンを竜の前にスッと出した。

藤ヶ瀬はさっきの女の子を思い出して
なんとなく笑ってしまった。




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