One Night Lover
健の話は両親が明日上京するので一緒に会って挨拶して欲しいというお願いだった。

華乃は何となく気が重い。

健といつかは結婚するつもりだけど
今すぐしたいと思ってる健とは明らかに温度差がある。

それに今は藤ヶ瀬竜のことで頭がいっぱいだった。

「明日は…ちょっと都合悪いかな。

大学の友達と久しぶりに会おうって約束しちゃって。」

「キャンセルできないかな?」

「ようやくみんなで日にち合わせたんだし、
今からキャンセルは申し訳ないし…出来ないよ。

健、結婚がちゃんと決まってから
こっちからきちんと挨拶に行く方がいいと思う。

だから今回はゴメン。」

「そんなにかしこまった席にしようとしてるわけじゃないよ。」

「でも…明日はとにかく無理だから。」

健はすぐにでも結婚したいのに
華乃はずっと結婚に対して及び腰でなかなか踏み切れない感じがする。

そんな華乃がもどかしかった。

「マジで結婚する気あるの?」

健にそう聞かれると華乃は答えに困ってしまう。

「する気はあるけど…

だけど…まだ自分がちゃんとしてないから自信がないの。」

「いつになったらその自信を持てるわけ?

華乃はさ、本当に俺のこと好きなの?」

健のことは本当に好きだ。

優しいし、良い人だと思う。

でも竜のようなトキメキは感じられない。

だけど結婚にはそんなものは必要ないと華乃は思ってる。

「もちろん好きだよ。

結婚するのは健しか居ないって思ってる。」

そうなのだ。

結婚するなら絶対に健なのだ。

もし、万が一藤ヶ瀬のような相手と結婚したら
とてもじゃないが安らげないと思うからだ。

それでも実際、藤ヶ瀬と再会した華乃の気持ちは大きく揺らいだ。

あの夜の事は華乃にとって
忘れる事の出来ない夢のような時間だったから。

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