One Night Lover
華乃は藤ヶ瀬にまたあんな風に抱いて欲しいと思ってしまった自分を心の中で責めた。

自分の状況はあの時とは違うのに
藤ヶ瀬に一瞬でもめちゃくちゃにされたいと思った自分がふしだらで汚く思える。

今日、健の両親に会うべきだったと帰り道に何度も後悔した。

アパートの近くまで来た時、
偶然、コンビニ帰りの渉に会った。

「今帰り?」

「うん。」

華乃は渉を見てすこし恨めしくなる。

あの時、渉が華乃と付き合ってくれてたら
藤ヶ瀬に会う事はなかったし、
健を傷つけることも無かっただろう。

「何?俺の顔になんかついてる?」

「別に。」

渉はビールが何本も入ったコンビニの袋を持っていた。

「先輩、そんなに1人で飲むの?」

「別に今日全部飲もうってわけじゃないけど…
良かったら一緒に飲む?」

暗い顔をして歩いていた華乃を渉は誘ってみる。

「うん。」

「なんかあったの?」

「ううん。」

明らかになんかあった顔だけど
華乃はそれを否定した。

ずっと自分の近くにいた華乃が
知らないところでどんどん大人になっていくみたいで渉は少し寂しい気持ちになった。

「華乃…なんかあったら頼ってな。」

華乃はその言葉に泣きそうになった。

華乃が渉と並んで歩き始めるとアパートの前で健にバッタリと会った。

「健…どうしたの?こんな時間に…」

「ちょっと話がある。」

渉は華乃の肩を叩いて

「華乃、酒盛りはまた今度な。」

と言って健に軽く会釈すると自分の部屋に1人で帰って行った。

華乃は健と自分の部屋に戻り、
健は何も言わないまま華乃の後に付いて部屋に入った。

「ご両親帰ったの?」

「うん、最終の新幹線で。」

「そう。今日はごめん…」

健は話があると言ったのになぜか黙ったままだった。

「話しって?」

「華乃は…本当に俺が好きなの?」

華乃はまた健に後ろめたい気持ちになった。

「もしそうじゃないなら…。」

健がそう言いかけた所で
華乃がいきなり健にキスをした。

「好きだよ。」

そう言って健に濃厚なキスを華乃が仕掛けてくる。

「健…抱いて。」

華乃が積極的なのに戸惑ったが
健もだんだんその気になっていく。

そして獣のように華乃に覆い被さった。





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