One Night Lover
行く場所の無くなった華乃は
フラフラと夜の街を歩いた。

健はきっと疑い始めた華乃と藤ヶ瀬の仲をこのまま見過ごす事は出来ないだろう。

嫉妬深い健はきっと華乃を許さない。

勝手に疑って嫉妬に狂ってきっと自滅する気がした。

行くところのない華乃は狭い小さなバーの扉を開け
そこでマティーニを頼んだ。

客は華乃の他に常連らしい男が1人いる。

その男が華乃の方をチラチラと見ていたのを華乃は気づいていた。

今夜、この男と寝たら帰らなくて済むかなぁと
華乃は男との情事を妄想した。

でも全く華乃のタイプじゃなかったので
華乃は一杯だけ飲んでバーを出た。

(やっぱり誰とでも寝られる訳じゃないよね。)

華乃はそんな自分に少し安心する。

そして仕方なく家へ戻る道を歩いた。

部屋に帰ると健はもう居なかった。

華乃は健の居ないガランとした部屋の真ん中に座り込んだ。

もう健とはダメかもしれない。

それは良いとしても藤ヶ瀬がとんでもない金持ちの家の息子だというのが華乃にとってはなかなかの衝撃だった。

藤ヶ瀬との結婚を夢見てたワケじゃないけど
結局はもて遊ばれて捨てられるのだ。

それでも藤ヶ瀬が恋しくて
藤ヶ瀬の気持ちが全くわからなくて
思わずまた涙が出てきた。

泣いてると渉が部屋にやって来た。

「華乃、田舎から漬物届いたからおすそ分け…」

渉はまた華乃が泣いてるのに気がついた。

「いったいまた…どうしたんだよ。

彼氏とうまくいかないのか?」

華乃はさっき渉が連れて来た元カノの存在が気になった。

「いいの?さっきみたけど…
元カノ部屋にいるでしょ?

先輩今夜、彼女と寝たんでしょ?」

「そうじゃないよ。ちょっと借りてた物があって取りに来ただけ。

もうとっくに部屋に居ないよ。」

華乃はなぜかホッとしていた。

渉と寝たから変な独占欲みたいなモノが生まれたようだ。

「俺のことはいいよ。

それより華乃はどうして泣いてたんだよ?」

華乃はまた渉の胸に顔を埋めた。

渉の心臓の音が華乃に聞こえるくらいに大きな音を立てている。

「先輩…昨日どうしてあんなことしたの?」

渉は自分の身体が変化するのがわかった。

「華乃が…可愛かったから。」

そして華乃にまたキスをした。
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