One Night Lover

健は美南と別れ、気がつくとなぜか華乃のアパートの前まで来ていた。

華乃の部屋は真っ暗で
健は華乃が藤ヶ瀬と逢ってるんだと思い込む。

その時、華乃は一階下の渉の部屋で
渉に抱かれていた。

華乃は渉に道具のように粗雑に扱われたかった。

渉はもともとそれに近い抱き方をする。

華乃はそういう扱いを受けると返って救われる。

渉は華乃を抱いた後、優しいいつもの渉に戻ってベッドを降りた。

華乃は渉と寝た後、毎回少しだけ空しさが残る。

「先輩、タバコ貰っていい？」

「華乃、吸わないだろ？」

「ちょっと吸ってみたい。」

渉は華乃の口にタバコを咥えさせ
ライターで火をつける。

華乃は裸で寝転んだまま、
天井をめがけて深呼吸をするようにその煙を吐いた。

「美味しい？」

「美味しくない。」

渉は華乃の指からタバコを取り上げて
自分の指で華乃の唇を撫でるように触れる。

「口寂しいならこっちのが良いだろ？」

華乃が頷いて、
渉は華乃にキスをした。

「先輩…私のこと好きですか？」

渉は少し笑って

「好きだよ。」

と言った。

でも華乃の心は満たされなかった。

渉もそれに気づいているようで

「華乃…縛られないで好きに生きればいいよ。」

と華乃の髪を撫でて優しく言った。