One Night Lover

華乃の部屋に健が上がるのは久しぶりだった。

華乃は相変わらず片付けが下手で
昨日脱いだ服がそのままソファの背もたれにかかっている。

「ゴメン…散らかってて。」

健はその部屋の様子を見て少し安心した。

少なくとも自分以外の男を連れ込めるような状態ではないと思ったからだ。

慌てて片付ける華乃の後ろ姿のヒップラインに唆られて思わず背後から抱きしめたくなる。

「適当に座ってて。

今、コーヒー淹れるから。

あ、それとも何か食べる？」

冷蔵庫を見て何も作れるような状況でなかった事に気がついて

「ゴメン…なんか買ってくる。」

と華乃が外へ行こうとして健はその腕を掴んだ。

「いや、いいよ。飯食いに来たワケじゃないし…
今日は俺たちの今後のことを話し合うために来たんだ。」

華乃は少し緊張している。

復縁する自信も無いし、別れ話をされても困る。

何しろもう誰もが華乃と健は結婚するものだと思っている。

そのために異動までさせられた。

この先、藤ヶ瀬と噂が立ったらまた違う部署へ行かされるどころがもう会社に居られる立場じゃなくなるだろう。

今の華乃は自分の身の置き場がわからなくて
フラフラと彷徨う糸の切れた凧みたいで
そんな自分がただ不安だった。