One Night Lover
商店街で夕食の買い物を済ませ華乃は渉の部屋に行った。

要らないものはみんな捨てたらしく
質素でテレビすら無い部屋だった。

「テレビとかどうしたんですか?」

「うん、捨てた。

パソコンとスマホで何でも観れるしね。

それに物があると…壊したくなるから。」

その言葉が華乃の胸に刺さった。

渉は得意なナポリタンを作って華乃を食卓に呼んだ。

「相変わらず美味しい。」

渉はいつものように華乃の口に付いたケチャップを自分の指で拭って

「華乃…もしかしてなんかあった?」

と聞いた。

それだけで華乃はすごくホッとした。

悩んでいても誰にも話せなかったことを
渉になら躊躇する事もなく話ができた。

「私ね、今の会社辞めようと思ってる。」

「結婚するから?」

「ううん…それは破談になった。」

「そっか。やっぱりね。」

「先輩、仕事は?」

「今は友達の事務所から仕事貰ってる。」

「病院は行ってる?」

「うん。少し楽になったよ。」

「少し痩せたみたい。ちゃんと食べてる?」

「うん…」

華乃は渉のことを色々知りたかったが、
渉は自分のことはほとんど話さなかった。



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