One Night Lover
華乃は渉と少しお酒を飲むと
疲れていたのかそのまま眠ってしまった。

その間、華乃に何度も電話がかかって来てるのに渉が気がついた。

バイブレータの音で起きないように渉はその電話を華乃の近くから遠ざけたが
あまりに何度も鳴るので着信相手を確かめた。

相手は婚約者の健だと思っていたが
華乃が自分に抱かれていた時に呼んだ名前だった。

渉はベランダに出てその電話に出た。

「もしもし、どうして帰らない？」

電話に出るなりいきなり怒鳴りつけて渉は気分を害した。

「華乃はあなたに逢いたくないから帰らないんです。

今夜はウチに泊めますから帰ってください。」

竜は知らない男の声にかなり動揺した。

そして華乃と名前で呼ぶのも気に障った。

気を沈めて落ち着いた声で聞いた。

「あなたは…どなたですか？
池田の…何なんですか？」

「華乃は妹みたいなものですから。

兄というべきでしょうか？」

フッと笑った渉の声を竜の耳が拾ったとき、
頭に血が上った。

完全にヤキモチだったが、
竜はまだそれを認めたくなかった。

「すいませんが、池田がそこに居るなら代わってもらえませんか？」

「申し訳ないが…華乃はもう眠ってます。」

「あの…血は繋がって無いですよね？」

「はい。」

「それなのに彼女を部屋に泊めるんですか？」

「華乃とはそういう関係です。

家族みたいなモンですからお気になさらず。」

渉はそう言って電話を切った。

渉の中にも少なからず嫉妬心があった。

何も知らずに眠る華乃をこのままさらってしまいたいと思った。




< 59 / 110 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop