One Night Lover
エレベーターに乗ると二人して大きな深呼吸をした。

「ヤバいモノ見たな。」

「うん。」

華乃はなぜか2年前のあの男とのキスを思い出していた。

健と目が合うと、健は何となくいつもと違う目で華乃を見つめてる。

その時、エレベーターの扉が開いて華乃が降りようとすると健は華乃の腕を掴んで引き止め、
エレベーターの扉をもう一度閉めた。

そしてそのまま華乃にキスをした。

華乃は健のキスをあの男との思い出に重ねてしまう。

そしてあの男とは違う唇に気がついて
健を突き飛ばした。

「ごめん…嫌だった？」

「2人のキスを見て欲情しただけでしょ？」

「いや、そうじゃなくて…あー、キッカケはそうなんだけど…

オレ…ずっと…池田のこと…好きで…」

華乃は少し驚いていた。

いつも嫌味ばかり言う健が自分を女として見ていたとは思いもよらなかったが
何となく嬉しかった。

「付き合ってくんないかな？」

健は華乃に思い切って告白した。

華乃は突然過ぎてどう答えたらいいかわからなかった。

華乃の中にはずっとあの男の存在があった。

でもいつまでも二度と会うこともないあの男の事を想っててもどうしようもない。

華乃も健に全く気持ちがないわけでもない。

口は悪いけど、いつも優しさを感じてた。

顔もそこそこイケてるし、
今のキスも悪くなかった。

何度か身体を重ねたらあの男との事は上書きされて忘れられるかもしれないとも思った。

「いいよ。」

華乃はそう言うと、健ともう一度キスをした。

その夜、華乃は健のマンションに泊まった。

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