One Night Lover
藤ヶ瀬は店員を呼んでチェックをすると
すでに呼んでもらっていたタクシーに華乃を乗せて自分のマンションの場所を運転手に告げた。

華乃は藤ヶ瀬と手を繋いだまま何も言わずにただ隣に座り、
これから起こるであろうことを考えていた。

今夜は多分帰れないだろう。

とうとうその手に堕ちるのだ。

胸は高鳴っているが、それと同時に不安もある。

健とのこともまだ中途半端で
渉のことも心配だった。

そして何よりこの仕事をまた失う気がした。

だけど今の華乃にとってそれは全て
藤ヶ瀬が欲しいという想いを超えられないものだ。

冷静な判断をする気持ちにはなれなかった。

このまま藤ヶ瀬に堕ちたいと思ったし、
またあの夜の様に全てを奪って欲しかった。

マンションに着くとエレベーターの中で藤ヶ瀬とキスをした。

ドアが開くと同時に着ているものを剥ぎ取られて
ベッドに到着する前に脚を開いた。

藤ヶ瀬の指や舌が華乃を狂わせて
華乃は快楽のためだけにその身体を動かした。

何度も気を失いかけて
何度もそれを求めて華乃は5年前のあの夜よりもっとその心を震わせた。

正気に戻った時には全てが終わり
藤ヶ瀬の腕の中で髪を撫でられていた。


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