One Night Lover
「会社辞めないってどういうこと?」

健が華乃を呼び出して雨来梨沙の事務所に行かないことを問い詰めた。

「華乃にとってチャンスだろ?」

「私…健とは破談になったんだからまたデザイン課に異動してもいいよね?」

健は信じられないというような顔をした。

「破談になったからって戻れると思ってるのかよ?」

「藤ヶ瀬部長が戻してくれるって。

元はと言えば全部健のせいでしょ?

結婚焦って私だけ異動になって、
藤ヶ瀬部長殴って、また私が異動になって…

健が雨来梨沙のところに行けばいいじゃない!

親しいんでしょ?」

健のデザインが雨来梨沙の店に置く物とはかけ離れてると華乃も分かっているが
健を困らせたくて無理を言った。

しかし華乃がデザイン課に戻る話は難航し
華乃は1ヶ月が過ぎてもまだ総務部を動けなかった。

一方で藤ヶ瀬とは順調で
華乃はこのままこの幸せが続くことだけを願っていた。

総務部の仕事にも少しずつ慣れてきた。

今の華乃の頭にはデザインの事など二の次だった。

健はそんな華乃を見てもどかしく感じた。

華乃には本当に才能があるのだ。

健は華乃が仕事で成功したら結婚を止めるのではないかと焦っていた。

あの時、結婚することで華乃が異動してデザインの道を諦めることを望んでいた自分をずっと卑怯だと思っていた。



< 72 / 110 >

この作品をシェア

pagetop