One Night Lover
聖司はずっと頼りになる友達だった。

菜那はあの日、お金を受け取った母を許せず
家に帰りたくなかった。

これからどうしたらいいかもわからなくて
悲しんでいる菜那に寄り添って話を聞いてくれる唯一の友達が聖司だった。

「どっちにしろ母が貰ったお金を返さないと…」

「ドラマみたいだな。

菜那…竜とは無理だと思う。

菜那、竜のことはもう飲んで忘れよう。

竜は良いやつだけど…あの家はやめた方がいい。

竜が例え強引に結婚するって言っても…
結婚はやっぱり家との繋がりだし、
親子の縁は切れないだろ?

菜那はあの家に入っても幸せにはなれない。」

「わかってる。どうせもう無理だから。

ママがお金受け取って…もうほとんど使っちゃったもの。

あんなお金…どうしたって私には返せないし…」

「まぁ、飲んで嫌なことは忘れよう。」

菜那は聖司がすすめてくるお酒を、どんどん飲んでその場所で気を失いかけた。

「菜那、歩ける?

もう帰ろう。」

聖司が菜那をおぶってタクシーに乗せた。

そして家に帰りたくないと言った菜那を自分のアパートに連れて行った。

自分のベッドに寝かすと菜那の脚が開いて
ミニスカートの中まで見える。

聖司だって健康な若い男でそんな姿を見たら
どうしたって菜那が欲しくなる。

菜那が帰りたくないと言った時、
聖司はすでにそのつもりだった。

ずっと好きだった菜那を手に入れるチャンスはもう今日しかないと思ってしまった。

覆い被さりキスをすると菜那は少し正気に戻って
聖司を拒んだ。

「菜那、好きだよ。ずっと菜那が好きだった。」

そう言って強引に菜那を自分のものにした。

菜那は泣いていたが、聖司はやめなかった。

「愛してる、菜那…愛してるから。」

菜那が泣き叫ぶとその口を塞いだ。

「頼むから騒ぐなよ。」

そんな聖司は見たくなかった。

だから菜那は途中で抵抗するのをやめた。

どうせ竜と一緒になれないならもうどうなってもいいと思った。

結局、菜那はもうまともに竜の顔を見られなくなって
竜に一方的に別れを告げ、
そのまま聖司と暮らした。

「結婚しよう。」

菜那は聖司のプロポーズを受けた。

もう竜を忘れたかったし、
聖司はあれから菜那に対して誠実だった。

愛されてると思って承諾した。

高校生の頃から聖司の人柄は知っていたし
優しくていい人だと信じていた。

自分を欲しがって強引に奪ったのも本当に愛してたからだとその頃は思えた。

そして菜那は聖司と籍を入れ、
竜の前から2人で姿を消した。




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