One Night Lover
竜は華乃が会社を休んだことを午後になって知った。

たまたま総務課に用事があって
華乃を探したが姿が見えず、近くの社員に聞いた。

「今日、池田さんは?」

「池田なら休みですが…何か?」

「あぁ、いや居ないならいいんだけど…
池田さんどうかしたの?」

「体調が良くないみたいですよ。」

竜はその後、華乃に電話をかけたが
華乃は電話に出なかった。

昨日約束をすっぽかしただけに気にかかる。

竜は竜で菜那に謝罪するため
聖司と菜那の家を何度も訪ねていたが
菜那には一向に会えなかった。

昨日は久しぶりに華乃に逢うつもりだったが、
華乃の部屋に行く途中、
聖司に呼び出された。

菜那が会ってくれるのかと思いきや、
菜那は結局また部屋から出て来ず
ただ聖司から菜那と幸せだと言う自慢話を聞かされただけで
そんな聖司を見て、竜はますます菜那は不幸なんじゃないかと心配になった。

頭の中は父への怒りと菜那への申し訳なさでいっぱいで
華乃のことは正直放ったらかしだ。

わかってはいたが、今はそれを気に留める余裕が竜にはなかった。

結局その日も竜はそれ以上華乃と連絡を取らなかった。

華乃はその頃、渉と一緒にいた。

渉は朝まで仕事をしていて、明らかに睡眠不足に見えたが
嫌な顔1つせず、華乃の話を聞いてくれた。

男も仕事も上手くいってない華乃を見て
渉はもう一度華乃とやり直したいと思うが
自分はまだ不安定でいつ華乃に暴力を振るうかもわからない状態だ。

それでも目の前に華乃がいると
つい自分のモノにしたくなった。

落ち込んでる華乃を渉は優しく抱きしめた。


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