One Night Lover

竜は父親に逢いに行き、宣言をした。

「会社を継ぎます。

その代わり、結婚は自分の決めた相手とします。

それが嫌ならお父さんとは絶縁します。」

父はあんなに嫌がっていた会社を継ぐと言ってくれて嬉しかったが
結婚相手はビジネスにとってはかなり重要である。

「結婚したい女がいるのか？」

「いえ、今はいません。

今の自分では誰も幸せに出来ませんから。

実力をつけてその準備が出来たら
迎えに行きます。」

父は納得していなかったが
せっかく会社を継ぐ決心をしてくれたので
その場は竜に従うフリをした。

そして藤ヶ瀬は会社を辞めて
自分の父の会社に入社した。

平社員から始めたいと言ったが、
父は竜の実力を発揮できる宣伝広告部の部長として迎え入れた。

竜はすぐに頭角を現した。

父でさえ、竜には社長になる器があると思っている。

父に言われた通りに会社に入り、
父が薦める相手と見合いをして
結婚した従順な兄より
自分の考えををしっかり持って
荊の道だろうと突き進む
破天荒な竜の方が経営者としては向いている気がしていた。

兄は兄で竜のおかげで父の重圧から解放されて
竜が会社を継ぐことに賛成してくれた。

こうして華乃と離れて一年が過ぎた。

華乃は恋人も作らず仕事に邁進した。

もちろん時々は寂しくてついついフラっとするところは今でもまだある。

相手は健であったり、
ハルちゃんの店の海斗であったりで
適当にその時相手が望めば肌を重ねた。

健も昔ほど結婚や恋人の地位に執着しなかった。

今は働いて輝いている華乃が好きだったし、
梨沙とも曖昧な関係を続けていた。