イケメンエリート、愛に跪く
「舟君、お願いだからやめて…
今から、舟君のおじいさま達に久しぶりに会うのに、びしょ濡れなんて絶対嫌だから」
舟は自分の首に巻き付きついてくる愛を抱え、波打ち際を歩き出す。
穏やかではない波は、舟の足元に勢いよく押し寄せる。
「愛ちゃん、ハワイにいる間、僕は何度でも言うから覚悟しといてね…」
愛は寄せては返す波が気になって、舟の言っている言葉の意味が頭に入ってこない。
「え…? 何を言うの…?」
首に必死に巻き付く愛を、舟は横抱きから正面向きに抱き直す。
「愛ちゃんは、僕と結婚して幸せになる…」
愛は驚いて舟を見た。
でも、舟の問いかけではない言葉に笑みをこぼす。
「もう、決まっちゃってるんだ」
舟は波打ち際から砂浜に戻り、愛を優しく下ろした。
「そう決まってるんだ…
愛ちゃんと結婚できるのなら、僕はこの約束を死ぬまで守るよ。
もう、愛ちゃんに辛い思いはさせない」
舟は愛の困ったような笑みを見て、小さく頷いた。
そんな簡単な事ではない。
愛ちゃんが心の底から僕を求めるまで、僕は努力するだけだ。
それは、そんな遠い未来ではないはずだから。