イケメンエリート、愛に跪く



舟の祖父母の家は、そのビーチからそれほど遠くない小高い丘の上にあった。
その周辺はお洒落な住宅街になっていて、どの家も立派で高級なものばかりだ。


「舟君、おじいさま達は、私が一緒に来る事を知ってるの?」


愛が舟の横顔を見てそう聞くと、舟の口角が楽しそうに上がる。


「ちゃんと伝えてるよ。
だって、突然愛ちゃんを連れて行って、心臓でも止まったら嫌だからさ」


愛はホッとした。
高齢の二人にとってサプライズは酷だと思っていたから。


「まだ会ってもいないのに、すごく喜んで昨日も今日も寝てないらしい。
だから、心臓の薬をちゃんとテーブルに置くようにって言ってあるよ」


愛はその言葉だけで嬉しかった。
18年も昔の事なのにこんなに歓迎してくれるなんて。


舟の祖父母が暮らしている家は、真っ白い外壁の平屋建ての家だった。
でも、門からの敷地が広く、母屋の大きな家の他に、コテージ風な家が二軒並んでいる。
そして、小高い丘の下には、さっき二人が立ち寄った海岸線が広がっていた。

舟が駐車場に車を停めると、母屋の方からバタバタと音がする。
愛が車から降りると、もうそこに舟の祖父母が立っていた。
二人は、以前より一回り小さくなって、顔にはしわが増えたけれど、あの優しい眼差しは変わらない。









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