イケメンエリート、愛に跪く



「愛ちゃん、いらっしゃい、大きくなったわね…」


舟のおばあちゃまは目に涙を浮かべて、愛に歩み寄る。


「舟君のおじいちゃま、おばちゃま、ご無沙汰しています。
今日は、こんな形でお二人に会えて、もう胸がいっぱいで……」


愛はその後に言葉が続かない。
確実に年老いた舟の祖父母の姿は、愛をこの地に急かした舟の気持ちがよく分かったから。
愛は、二人と何度も抱き合って、何度もお礼を言った。


「ねえ、こんなガレージの前じゃなくて、家に入らない?」


舟がそう言うと、三人は顔を見合わせて笑った。
愛は、舟を見る二人の眼差しに心からホッとした。

いつでもどこでも舟の事を心配して愛していた二人の姿は、18年経った今でも何も変わらない。
こんなに立派な大人になっても、おじいちゃま達の目にはあの小さな舟が映っているのだろう。
それは、きっと私も同じだけれど…

舟の祖父母の家には、お手伝いさんや執事など使用人が一緒に住んでいる。
大きな母屋の奥の方に、その人達用の住まいが準備されていた。

舟はその使用人と普通に英語で会話をしている。
愛は、その舟の流暢な英語を聞きながら、舟の今の姿を再認識する。
ハーバード大卒の舟は一流のイケメンエリートであって、世界を股にかけて活躍するニューリーダーだ。
愛は今頃になって、舟の凄さに怖気づいていた。






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