イケメンエリート、愛に跪く



舟は愛がバスルームに入るのを見届けると、たった10mしかないプールでただひらすら泳いだ。


僕達の再会は、懐かしさから始まった。
子供の頃の記憶しかない二人に、大人になった姿は新鮮だった。
特に、僕は、窮地に追いやられている愛ちゃんをただ助けたくて勢いで日本へ行ったけれど、その勢いはきっと必然であって、僕が愛ちゃんを手繰り寄せたのか愛ちゃんから手繰り寄せられたのか分からないが、でも、きっと、僕の魂は愛ちゃんを欲していた。

今では、もうその事しか考えられない…
愛ちゃんが欲しくて愛ちゃんの全てを自分のものにしたくて、頭がおかしくなりそうだ…

舟は冷たいプールで頭を冷やしたかった。
愛ちゃんは心も体も傷ついていて、その傷が一体どれくらい癒されているのか僕には見当がつかない。

僕は愛ちゃんを抱きたくてしょうがないけれど、でも、愛ちゃんは…?


舟はプールの奥底に潜った。
今までの人生、恋愛でこんなに真剣になった事はない。
友達になったからキスをして、気に入ったから体を重ね合う。
それはとても単純な事で、悩む必要なんてなかった。

舟は息が続かなくなり、月明かりが浮かぶ水面に勢いよく顔を出す。
すると、プールサイドに愛が座っていた。
洗い髪を無造作に丸め化粧を落とした素顔の可愛い顔で、舟を見つめている。






< 108 / 163 >

この作品をシェア

pagetop