イケメンエリート、愛に跪く
愛は水の中がこんなに美しいとは知らなかった。
舟という大きな繭に包まれているからなのか、あんなに怖かった水が何も怖くない。
舟の背の高さでも届かない水の底に目をやると、陸から差し込む照明がダイヤモンドのように線となってプールの底でゆらゆら揺れている。
…綺麗。
そう思った瞬間、愛の体は上へ向かって移動していく。
あっという間に、水面に顔を出した。
愛は息が続かなくなっている事に気付いていなかった。
それほど水の中が美し過ぎて、いつまでも舟の腕に抱かれ水の中に沈んでいたいと思っていた。
愛は頭の中とは裏腹に、肩で息を切っている。
「舟君…
すごく綺麗だった…
今までは水が怖くてこんな風に潜る事なんてなかったから…
舟君、ありがとう…
こんな経験させてくれて…」
舟はずぶぬれになっている愛を力強く抱きしめる。
そして、愛が苦しくならないように、浅くなっているプールの隅の方へ移動した。
舟は愛の瞳に付いている水滴を優しく拭うと、水の中にいるせいか、愛の体は少し震えていた。
「愛ちゃん、寒くない…?」
舟が愛を水の外に出るように促すと、愛は嫌だを首を振った。
舟の首元に抱きついたまま、離れようとしない。
舟はその時、自分の心の中のたかが外れるのが分かった。
水面に顔だけ出した二人は、むさぼるようにキスをする。
生温いプールの水が二人を優しく包み込み。
月が雲に隠れてしまっても、水面を揺らす橙色の照明が優しく二人を照らし出す。
もう二人は愛し合う事を止めるなんてできない。
本能に身を任せ、溢れ出る情熱に身を委ねた。