イケメンエリート、愛に跪く
おじいちゃまは急に立ち上がり、ティッシュの箱をおばあちゃまの横に置いた。
自分も手が届く場所に。
「舟を驚かせようと思ってね、私達も園子もアメリカに来る事を知らせないでいたの。
舟が喜んでくれるかと思っていたら、逆だった…
あの子があんなに感情を表に出して泣いたのは、後にも先にもそれしかない。
今でも、私達の心に傷となって残っている…」
二人ともティッシュを取って涙を拭いている。
愛はどう声を掛けていいか分からなかった。
「おじいちゃん、おばあちゃん、何でこっちに来たの?って舟は大泣きした。
おじいちゃんとおばあちゃんがこっちに来たら、僕は大好きな日本に帰れないじゃないかって…
あの子にとって、私達が日本で住んでいたあの家はたった一つのオアシスだった。
あの子にとっては故郷であって、大好きな愛ちゃんが待ってくれている大切な場所だった…」
愛は自分の名前が出てきた途端、涙が溢れ出した。
あの頃の小さな舟君を思い出して、涙が止まらない。
「園子は厳しい子だったから、舟にしばらくは日本の事は忘れなさいって説き伏せた。
普段はあんなに大人しい舟が、その時ばかりは大きな声で泣き叫んだの…
おじいちゃん達、お願いだから日本に帰ってって…
おじいちゃん達がここに来たら、僕は日本に帰れないじゃないかって…
私達はどうしていいか分からなかった…
園子は中途半端な優しさが舟を苦しめるだけだから、このままでいいのと舟をつき離すし…」