イケメンエリート、愛に跪く
おばあちゃまが涙で言葉に詰まると、代わりにおじいちゃまが優しい声でゆっくり話し出す。
「その日の晩に、私が舟の部屋へ行って、理由を聞いてみたんだ。
ベッドに顔を押し付けて一晩中泣いていた舟は、私の胸に抱きついてきた。
おじいちゃん、愛ちゃんに会えなくなっちゃうじゃないか…
僕は今度の夏も会いに来るからって約束したのに…
舟にとって、愛ちゃんは、一番の友達でお姉ちゃんで、大切な初恋の人だった。
おじいちゃんからお母さんに夏休みは日本に帰れるようにお願いしてみるからそんなに泣くんじゃないって、その時は慰めたんだけど…
でも、その年以降、日本に帰ることはなかった…」
おじいちゃまは優しく私を見た。
「どういう理由であれ、愛ちゃんが舟の事を忘れていなかった事が本当に嬉しくて…
いい大人なのにね…
私達にとって舟は、今でも小さな子供のままなんだ…
あの日舟が泣き崩れた夜を今でも昨日の事のように思い出すけれど、愛ちゃんと舟がこうやって再会できた事で何だか胸のつかえが少しだけ取れた気がしてる…」
舟のおばあちゃまは私の手をゆっくりと握った。
「愛ちゃん、本当にありがとう…
それを愛ちゃんに伝えたかったの…
あと、本当にごめんなさい…
舟は日本で交わした愛ちゃんとの約束はちゃんと覚えていた…
でも、まだ小さな子供だったから、自分でどうする事もできなかった…
今、舟が何を考えて、愛ちゃんをここに連れて来ているのかは知らないけど、私は愛ちゃんが舟のお嫁さ…」