イケメンエリート、愛に跪く
舟と愛はシュノーケリングは一切せず、ずっと波と戯れて泳いだ。
水が嫌いで泳ぐ事が苦手だった自分の変わりように、愛が一番驚いている。
波を頭からかぶっても、舟がいてくれれば可笑しくて笑いしか出てこない。
ハワイに来て本当に良かった…
苦手なものを克服しただけなのに、何だか自分の人生が開けて見えた。
あっという間に時間は過ぎ、もう太陽は夕日に変わる準備を始めている。
愛と舟は車に積んでいる真水で体を洗い水着から普段着に着替え、水平線に沈む夕日が一番よく見える岩場の上に二人で腰かけた。
愛はもう涙が堪える事ができない。
映画のシーンに出てきそうなサンセットに包まれ、耳に心地よい波の音が愛の心を震わせる。
最高に幸せだった夢のような出来事が終わりを告げる事が寂しくて寂しくて、こみ上げる涙が止まらない。
舟はそんな愛の肩を優しく抱き寄せた。
僕だってこのまま時間が止まるなら、この場所でこの時を死ぬまで過ごしたい。
愛の気持ちが痛い程分かる舟は、抱き寄せる愛の肩を優しくさするだけだった。
「愛ちゃん、何も泣く事はないよ…
こんなに幸せだったハワイでの日々は、終わりなんかじゃない。
僕達はこの場所から始めるんだ…
というか、もう始まってる。
それは愛ちゃんも分かってるだろ…?」