イケメンエリート、愛に跪く
愛は自分の意気地のなさに途方に暮れていた。
あのどん底を味わってからまだ一年も経っていない。
妻子ある男を狙う泥棒女とか地獄に堕ちろとか、恐ろしい程の罵声を浴び、でもそれに必死に耐えてきた。
自分は悪い事をしたつもりはなくても、世間の目は氷のように冷たかった。
結果的にある事ない事フェイク記事が週刊誌を賑わい、私は自分で対処できない限界まで追いやられた。
信じていた恋人に、会社に、ばっさりと裏切られたあの衝撃は、私の中にある愛する気持ち信じる心を抹殺した。
でも、舟は違う…
何があっても幸せにすると約束してくれた。
舟の繭のような愛情に包まれていると、本当にきっとそうしてくれると心が軽くなる。
でも、怖い…
舟は絶対に私を裏切らないと言ってくれるけど、でも、そうじゃなかったら…?
舟の真剣な気持ちを知れば知る程、それにのめり込んでしまう自分が怖かった。
「……愛ちゃん?」
愛は舟の呼びかけにハッと我に返った。
あまりにも海の中へ沈んでいく夕日が美し過ぎて、愛は正直な胸の内を舟に伝える勇気が少しだけ湧いてくる。
「舟君、本当にありがとう…
舟君が真剣に私の事を考えてくれて、本当に感謝してる…
だから、私も、私の中にある今の本当の気持ちを聞いてほしい」