イケメンエリート、愛に跪く



愛はそう言うと、小さく息を吐いた。

愛は自分の曖昧な言葉が、舟を不安にさせている事は分かっていた。
でも、真剣に私の事を考えてくれている舟に、ちゃんと今の私の本当の気持ちを伝えたい。


「あの時は…

不倫とは違うと思ってた。
その人を尊敬してたし確かに愛していたけど、でも、家族から奪ってしまおうとかそんな事は全く考えてなくて…

そんな事言ってもそれは世間の目からみれば立派な不倫で、私はそれを潔く認めたし、何度も謝罪をした。
でも、何度も何度も謝っても、私への中傷は止む事はなくて、逆にそれはエスカレートしていって…」


あの時の空気感が愛の頭の中に甦ってくる。
愛は目の前が歪んでいくのが分かった。でも、それでも舟にきちんと話したい。


「自分が蒔いた種だからどんなに非難をされても踏ん張るしかなかった。
そしたら、ある日、全くでたらめを書かれた週刊誌が発売になって…
その時、大好きだったその人と私を守ってくれるはずの会社に裏切られた事を初めて知った…」


愛の声はか細くそして震えていた。
ハワイの壮大な夕日がそんな愛を優しく包み込む。
でも、そのハワイの夕日でも愛の裏切られたトラウマには太刀打ちできない。







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