イケメンエリート、愛に跪く
舟はそんな愛を優しく抱き寄せた。
「愛ちゃん、もういいよ…
僕は、別にそんな事は気にしないし、関係ない。
愛ちゃんにも僕にも、色々な過去があるのはしょうがないよ。
だから、そんな無理して話さなくていいから…」
でも、愛は首を振りながら舟の胸から体を起こす。
「私は聞いてほしい…
舟君が私の事を真剣に考えてくれるのなら、私の全てを知ってほしい」
愛はそう言うと、また前を向き海の向こうの夕日に目をやる。
この夕日が沈む前に話してしまいたい。
「その時のダメージは本当に大きかった。
私を悪者にする事で事が丸く収まるのなら、それならそれでしょうがないと思って、ギリギリの所で必死に頑張った…
でも……
でもね… 容赦ないマスコミは私を追いかけるだけじゃ物足りなくなって、私の家族や友達までも追いかけだして…
もう、皆、ボロボロになった…
特に、私の弟は、大学四年で、やっと入れた憧れの商社に私の事が原因で、内定を取り消しにされた…」
愛の目から大粒の涙が溢れ出す。
「舟君… 私はどうでもいいの…
でも、私の愛する人達が、皆、不幸になった…
皆、心に傷を抱えたまま、今も必死に生きている。
だから、やっぱり、張本人の私が、幸せになるわけにはいかない…
……いかないんだよ、舟君」