イケメンエリート、愛に跪く
舟はこんな時でも愛に幸せをもたらせてくれる。
愛は寝転んだシートから見える満天の星空に、あっと声を上げた。
舟はそんな愛の手を握りしめる。
「愛ちゃん、神様は、愛ちゃんにどうしても幸せになってもらいたいみたいだな。
それは、僕も一緒だよ…
愛ちゃんを幸せにできるのは、僕しかいないと思ってる。
でも、愛ちゃんの気持ちを無視して僕だけが突っ走るわけにもいかない」
舟は体を横向きにして、愛をジッと見つめた。
ここでこんな話を持ち出す僕は、本当にずるくて意地悪だと思う。
でも、どういう手段を使ってでも、僕は愛ちゃんをロンドンに連れて行きたいんだ。
「愛ちゃん、僕は、日本に帰ったら二日後には東京を離れる。
ロンドンに赴任になった話はこの間しただろ?
ロンドンに入ったら、もうしばらくは身動きがとれないんだ。
愛ちゃんに会いたくなっても、日本には絶対に来れない…」
愛ちゃん、ごめん…
僕は本当に最低な奴だ、こんな風に愛ちゃんに答えを出させるなんて…
「愛ちゃん、結婚とかそういう形式的なものはいつでもいいんだ。
僕はただ愛ちゃんと一緒にいたいだけ…
離れたくない…
僕がロンドンに向かう時、愛ちゃんのチケットも準備しとく。
だから、一緒に行こう…
そうじゃなきゃ、僕達は本当に会えなくなるよ…」
僕に失敗はない。
そんな僕の中の伝説が、今回で崩れ去るかもしれない。
でも、どうしよう…
今回ばかりはマジで自信がないんだ…
愛ちゃんの温もりを知ってしまった今は、僕はもうただの弱い男でしかないから。