イケメンエリート、愛に跪く
愛がしゃがんで必死に呼吸を整えていると、美弥が会議室に入って来た。
「柏木さん、大丈夫ですか?」
美弥に背中をさすられて、やっとまともな息が戻って来る。
「美弥ちゃん、ありがとう…
変なところ見られちゃったね…」
愛がそう言うと美弥は大きく首を振り、あっと思い出したような顔をした。
「柏木さんにお客様です。
今、一階の受付から連絡があって。
なんか、大切な人が待ってるらしいです。
大丈夫ですか? 行けますか?」
愛はその大切な人という言葉に引っかかり、慌てて一階の受付まで急いだ。
「あ、柏木さんですね?
そこの特別ルームの中でお客様がお待ちです」
特別ルーム? もしかして局長とか??
愛が恐る恐るドアを開けて中を覗き見ると、そこには背の高いスラッとした男の人が立っていた。
窓から差し込む陽の光が反射して顔がよく見えない。
「愛ちゃん、久しぶり。
僕を覚えてる…?」
僕?
愛はそのたどたどしい日本語に何となく聞き覚えを感じながら、その人の前へ近づいた。
「愛ちゃん、僕だよ…
舟だよ、覚えてる?」
しゅ、舟君…?
愛はすぐにその人が舟だと分かった。
だって、身長は大きくなったかもしれないけど、あの憎めない可愛い顔はそのままだったから。