イケメンエリート、愛に跪く
翌日、舟は朝から会社の社長室に籠りっきりで、ソフィアに頼まれた仕事に没頭した。
僕を次期社長にしたいのは分かるけれど、こんなの今の僕がやる必要はないだろ…?
そんな事を心の中でぼやきながら、一つずつこなしていると、ソフィアのPCに着信が入る。
PCの画面いっぱいに映し出されたのは、社長のソフィアだった。
「舟、やっと、私のPCを見てくれたのね」
ソフィアは心なしか顔が笑っているように見える。
「何の用?
とういか、最初に言われていた用事より、増えてるような気がするんだけど…」
舟が少し嫌味を含んでそう言うと、ソフィアは今度は本気で笑った。
「舟、ロンドンへ着く日に変更はないわよね?
向こうのスタッフが首を長くして待ってるから…」
「変更ないから、心配しないで。
そんな用事だったら、もう切るよ」
舟はソフィアの顔に母親の顔が見え隠れするのに、気が滅入っていた。
「舟、おじいちゃまからちょっとだけ聞いた。
あなたがロンドンに誰を連れてきても、母さんは大歓迎だから。
それが、愛ちゃんならなおさら…」
「母さん…
そうなったらちゃんと報告するから…
今は、母さんの仕事を済ませる事でいっぱいいっぱいだから、もう切るよ」
舟はそう言うと、画面と通話をオフにした。
母さん、ごめん…
今の僕は珍しく余裕がないんだ…