イケメンエリート、愛に跪く
舟は、愛が特別ルームを覗き込んだ時に、心臓が止まるかと思った。
特別ルームの重厚な扉がゆっくりと開きそこに見えたのは、小学生のままの愛ちゃんだったから…
大きな窓から差し込む光が、愛の透き通る肌を綺麗に映し出す。
長い髪に大きな瞳、驚いて僕を見る目は、あの頃の愛ちゃんそのままだ。
舟は戸惑う愛をずっと見ている。
まるで時間が逆戻りしたみたいに、僕は愛ちゃんとおじいちゃんの家の庭で会っている感覚に陥る。
「舟君、おかえり」
子供の頃の愛ちゃんはそう言って、いつも僕を笑顔で迎え入れてくれた。
「舟だよ、覚えてる…?」
舟のその一言で、愛の顔がパッと明るくなった。
懐かしさと驚きと何だかホッとした顔をしている。
「…舟君、どうしたの?
え、日本に帰ってきたの…?
何年ぶりかな…?
確か、私が小学五年生の夏以来だと思うけど…
え? でも、何で?
何か用事のついでがあった? 急にこんな所まで来て…」
愛は矢継ぎ早に舟に質問をする。
舟の突然の来訪は、愛にとって救世主が現れたようなそんな不思議な気分にさせた。
さっきまでの大きなストレスが、舟の笑顔で奥に引っ込んでいく。