イケメンエリート、愛に跪く



舟はソフィアからの電話で、一気にやる気が失せてしまった。
時計を見ると、もうお昼に差し掛かっている。

舟は最後の賭けに出る事にした。
愛をどうしてもロンドンへ連れて行きたい。
その気持ちは、舟の中で消えるどころか風船のように膨らむ一方だった。

舟は以前愛の家にお邪魔した時に、愛の両親の携帯番号を聞いていた。
用意周到とはこの事だ。
あの時、何かのためにと聞いておいた二人の番号に舟は全てを託す。


「もしもし、舟ですけど…」


舟は愛の父親に電話をした。
こういう話は母親ではなく父親にちゃんと伝えておきたいと思ったから。


「愛さんと僕の事で大切な話があって…
愛さんには黙って、僕と会ってもらえないでしょうか?」


愛の父親は快く快諾してくれた。
でも、舟は、愛のお父さんの声に覇気がない事に気が付いた。


「舟君、愛はまだ寝てるのか部屋から出てこないんだよ…
二人に何かあったのか、実はすごく心配してた。

今日は午後から家内と買い物に出掛ける予定だったから、その足で舟君に会いに行く。
僕達はあんな事があって以来、愛の前ではうろたえてばかりで、愛には本当に可哀想な思いをさせてる。

舟君が愛を救いたいと言ってくれた事に、僕達は心から感謝してるんだ。
ありがとう…」


舟は電話を切ると、大きくため息をついた。
愛ちゃんがこの先の僕達の事をどう考えてるのか僕には未だに見当はつかないけど、でも、僕は僕で愛ちゃんを幸せにする方法はちゃんと分かっている。

愛ちゃんが判断できないなら、やっぱり僕が決めさせてもらうよ。




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