イケメンエリート、愛に跪く
愛は美弥達が企画した送別会へ顔を出し、少しだけ元気になれた気がした。
その後、二次会にも誘われたが、それは丁寧に断った。
今日は両親に元気な顔を見せなければならない。
二人ともハワイでの話を聞きたがっているはずだから、笑顔で楽しく話せるように頑張らなきゃいけない。
でも、そんな事を考える私は、結局、何も答えを出せずにいた。
舟と一緒にロンドンへ行きたい気持ちとここに残って今の暮らしを続ける気持ちを天秤にかけても、ゆらゆら揺れるだけで、ちゃんとした答えを出してはくれなかった。
幸せになる事に臆病になっているのは間違いなくて、あんな風に皆を不幸にしてしまった愚かな過去は私の中から消える事は絶対になかった。
「ただいま…」
愛が玄関に入ると、見慣れた靴がある。
……亮ちゃん?
愛は驚いて、リビングへ急いだ。
「お姉ちゃん、お帰り」
そこに座っているのは、愛のたった一人の年の離れた弟だった。
「亮ちゃん、どうしたの…?
こんな平日なのに、長野から車で来たの?」
愛は久しぶりに見る亮に涙が止まらない。
きっと、私が一番不幸にしてしまった可愛い弟…
その自責の念は、亮の顔を見るたびに大きくなる。
「うん、車で来た。お姉ちゃんの顔を見に…
今の仕事は俺のやりたい事をさせてもらってて凄く楽しいんだ。
社長も仲間もいい人ばかりで、だから、明日は昼からの出勤でいいって言ってくれた」