イケメンエリート、愛に跪く
愛はうんうん頷きながらも涙が止まらない。
「もうお姉ちゃん、そうやって泣くのは止めてよ。
俺はお姉ちゃんみたいに、過去なんてこれっぽっちも引きずってないんだからさ」
愛は涙を拭きながら、お父さんとお母さんの顔を見た。
二人とも、何だか泣くのを我慢しているように見える。
「お姉ちゃん、今日、俺がこんなに急いで家に帰ってきた理由、分かる?」
愛は首を傾げて分からないと呟いた。
亮は愛を通り越し父親の顔を見て小さく頷いた。
「今日、俺のとこに、舟君から電話があったんだ。
母さんから舟君が帰って来てる事をちょっとだけ聞いてたけど、もうマジでビックリしたよ。
俺の記憶の中の優しくて大人しい舟君と、同じ話し方だったからさ」
亮はケラケラ笑いながらそう話すけれど、愛は訳が分からない。
「愛、実はね…
今日の昼間、舟君に会って来たんだ。
舟君が大切な話があるから聞いてほしいって…
何の話をしたかはもう愛には分かってるだろ…?
そしたら、舟君に亮の電話番号を教えてほしいって言われて」
亮はその場に立ち尽くす愛を、自分の隣に座らせた。
「お姉ちゃん、舟君って面白いんだよ。
いきなり、俺に、亮ちゃんはお姉ちゃんに幸せになってもらいたいって思ってる?って聞いてくるんだ。
あまりにも唐突な質問で最初は訳が分からなかったんだけど、でも、もちろん思ってるよって答えたら、じゃ、その役目は僕に任せてほしいって」